2025年8月22日

ただ安いだけでは届かない時代に。夏の売場が示すテーマMDの力

こんにちは。この記事に目を留めていただきありがとうございます。

気候や社会の変化が進む中、売場では「なぜ必要か」を伝える工夫が大切になってきています。この記事では、この夏のテーマMD事例を通して、その兆しを一緒に考えてみたいと思います。

この夏の売場を見ていると、これまでの「価格競争」一辺倒の動きとは少し違う可能性が広がっているように感じます。物価高の中でPB強化が進む一方で、「安ければいい」という視点だけでは測れない新しいチャンスが生まれているのではないでしょうか。

ここ近年の気候の変化や長く続く夏、そして物価高騰などの社会背景によって、生活そのものが変わりつつあります。そうした変化をどう売場づくりに活かすかが、これからの鍵になっていく──この夏の動きの中で、そんな兆しが見えてきたように感じます。

長く続く夏がもたらす「必需」の価値

春が短くなり、5月から10月半ばまで夏のような暑さが続く“二季化”の気候。その中で、熱中症や防災といった“必需”に対するニーズが一段と高まっているように見受けられます。単に安さだけを打ち出すのではなく、「この商品がなぜ今必要なのか」を伝えるテーマ性のある展開が、売場で生活者の共感を得やすくなっているように感じます。

テーマMDが果たす役割

異常気象や物価高を背景に、「価格」だけでなく「意味」や「目的」を持った商品が注目されやすい状況が整いつつあるようです。だからこそ、テーマ性を持ったマーチャンダイジングは、売場で商品の“選ばれる理由”をより明確に伝える手段になり得るのではないでしょうか。

この夏に見えた工夫事例

実際に、この夏の売場ではいくつかの工夫ある取り組みが見られました。

バスクリン

  • お店:LIFE
  • テーマ:「夏の体づくり準備」
  • 提案:「入浴で暑さに慣れる」生活習慣を啓蒙。お風呂を活用した熱中症対策や体調管理を提案。

バスクリンによる夏場の生活用品売り場のエンド展開。涼と花火をモチーフに季節感と情緒のある演出を行う。

同社のウェブサイトでは、夏の体づくりと題して暑さに負けない体づくりとして入浴習慣を啓蒙。お風呂の上手な利用法、熱中症対策なども紹介。

バスクリンのウエブサイトで掲載されている熱中症対策の注意報マップや入浴による熱中症対策効果。夏場の10分の入浴を啓蒙する活動としてSpotifyによる音楽プレイリストやおすすめ名湯動画の紹介。

カルビー

  • お店:イオン
  • テーマ:「節電」
  • 提案:火を使わず調理できるグラノーラ。電力消費を抑えつつ栄養を確保できる提案。

カルビーのフルグラは、簡単で節電できる朝食としておすすめ。

牛乳やヨーグルトをかけるだけで、手軽に栄養を摂ることができる。また、フルグラは調理に必要な電気代がほとんどないため、節電効果も期待。

写真はイオンのレジ前の棚でのフルグラほかの展開。

商品の値上げが続く時代、カルビーは買い物客や小売業に朝食をフルグラにすることで、火や電気を使わず簡単おいしい朝食をテーマにした啓蒙を行う。

日清食品×サントリー

  • お店:SEIYU
  • テーマ:人生にはエネルギーが必要
  • 展開:日清焼そばU.F.O.とZONe ENERGY(UFOを食べるために開発されたU.F.O. ZONe ENERGY)をセットで展開。味と成分で夏の疲れ対策を提案。

「日清焼そばU.F.O.」は、1976年の発売以来、幅広い層の方々からご愛顧いただき、”カップ焼そば+油そば” カテゴリーでNo.1*1の売上を誇るロングセラーブランド。

近年は、ユニークなプロモーションや多種多様なラインアップ展開で、若年層から厚い支持を得ている。

“ぶっ濃い濃厚ソース” で疲れを吹き飛ばすようなおいしさの「U.F.O.」と、力強い味わいで若者に人気のエナジードリンク「ZONe ENERGY」がコラボした「U.F.O. ZONe ENERGY」が6月24日に発売。

「U.F.O.」を食べるときのために開発された「U.F.O. ZONe ENERGY」は「ZONeENERGY」史上最大級となるカフェイン150mgのほか、アルギニン800mgを配合。

「ZONe ENERGY」らしいフルーティーな香りはそのままに酸味とスパイス感を強化した、”ぶっ濃い濃厚ソース” に打ち勝つほどの力強い味わいが特長。

さらに、見た目にも「U.F.O.」らしさを演出するため、ソースを思わせる濃い色合いに仕上げた。

花王 × カバヤ

  • お店:SEIYU
  • テーマ:暑さ必勝おでかけコンビ
  • 展開:冷感タオル(ヒエタオル)と塩飴をセットで売場展開。暑さ対策アイテムの複合提案。

今年も猛暑が続き小売の店頭・売り場においては対策商品が展開される。

そうした中で、日本気象協会が推奨する熱中症ゼロプロジェクトに参画するメーカー企業が売り場で共同展開。

まとめ

いずれも「なぜ今必要なのか」という切り口を持っており、売場で生活者のイメージを喚起する仕掛けになっているように思います。

「安さ」だけでは届きにくい今、売場で成果を分けるのは“なぜ必要か”をどう伝えるか。その重要性が、この夏の兆しとして見えてきました。私たちも皆さまと一緒に、テーマ性を活かした売場づくりの可能性を考え、広げていければと感じています。

最後までお読みいただき、興味を持っていただけたらとても嬉しく思います。

※売り場の写真は許可を得たものではありません、ご迷惑になるようでしたら削除いたしますので、大変お手数をおかけしますがご連絡くださいませ。