2026年6月8日

こんにちは。いつもこのブログに目を留めていただきありがとうございます。
先日、ヤマダHDとエディオンの経営統合に関する発表がありました。
家電量販業界における大きな再編の動きとして、業界内外でも注目されているニュースだと思います。
もちろん、統合比率や店舗網、仕入、物流、会員制度、ポイント、アプリ、PB・SPA、既存ブランドの扱いなど、見るべき論点はいくつもあります。
ただ、発表された内容を見ている中で、個人的に「やはりそこが大きなテーマになるのか」と気になった点がありました。
それが、家電単品にとどまらず、家具、住設、リフォーム、住まいまで含めた住生活領域への広がりです。
今回の統合を、単に企業規模の拡大や業界順位の変化として見るだけでは、少しもったいないように感じます。
むしろ、物価高が続き、生活者の買い方が慎重になり、さらにEC化やネット比較が当たり前になる中で、家電量販店がこれからどのような役割を持とうとしているのか。
その視点で見ると、今回の統合には、これからの売場づくりや販促を考えるうえでのヒントがあるように思います。

家電量販店は、これまで店舗網や仕入規模、品揃え、価格競争力を強みに成長してきました。
大型店舗に行けば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、パソコン、調理家電、照明、電池、消耗品まで一通り揃う。
実物を見て、比較して、店員に相談して購入できる。
そうした店頭の力が、家電量販店の大きな価値でした。
しかし現在は、家電単品が以前よりも比較されやすくなっています。
同じ型番の商品であれば、どこで買うのが一番得かを簡単に比較できるようになっています。
つまり、家電量販店にとって、店頭に来てもらえることと、その店で買ってもらえることは、必ずしも同じではなくなっています。
ここに、今の家電量販店が抱える大きな課題があります。
この背景には、生活者の置かれている状況もあります。
物価上昇率そのものは一時期より鈍化していても、生活者の体感としては「高くなった価格水準」が日常になっています。
2026年4月の全国消費者物価指数は、2020年を100として総合113.0、生鮮食品を除く総合112.5となっており、前年同月比でも上昇が続いています。
食品、日用品、光熱費、外食など、暮らしに欠かせない支出が重くなる中で、生活者は買い物のたびに、以前よりも慎重に考えるようになっています。
こうした判断が、日々の買い物の中に入り込んでいます。
ここで大切なのは、生活者は単純に「安いものだけ」を選んでいるわけではないということです。
もちろん、安さはこれまで以上に重要になっています。
家計の負担が増える中で、少しでも支出を抑えたいという気持ちは強くなっています。
ただし、安ければ何でもよいわけではありません。
このように、生活者は商品ごとに、お金をかける理由と節約する理由を分けながら、買い物をしているように感じます。
特に家電は、生活者にとって失敗したくない買い物の代表だと思います。
冷蔵庫、洗濯機、エアコン、テレビ、調理家電などは、単価が高く、長く使う商品です。
買い替え頻度も低く、一度購入すると何年も使い続けるものが多くあります。
だからこそ、生活者は慎重になります。
冷蔵庫であれば〜
洗濯機であれば〜
エアコンであれば〜
テレビであれば〜
こうした不安があるため、生活者はネットで価格やレビューを調べながらも、実物の大きさ、操作感、音、見え方、使いやすさを確認するために店頭へ足を運びます。
つまり、家電量販店には、今も店頭に来てもらえる理由があります。
ただし、課題はその先です。
生活者は、店頭で実物を確認します。
店員に説明を聞きます。
サイズ感や使い勝手を確かめます。
しかし、その場で必ず購入するとは限りません。
店頭で確認したあと、スマートフォンで価格、ポイント、レビュー、配送条件、保証内容を比較します。
そして、より納得できるチャネルで購入します。
これは、生活者にとって自然な行動です。
失敗したくないから店頭で確認する。
損をしたくないからネットで比較する。
少しでも条件のよい買い方を探す。
物価高の中では、こうした行動がより強まっても不思議ではありません。
しかし店舗側から見ると、店頭が単なる確認の場所になり、購入がネットや別のチャネルへ流れてしまうことは大きな課題です。
いわゆるショールーム化です。
これからの売場には、商品を見せるだけでなく、
この商品を選ぶ理由とこの店で買う理由
の両方を伝えることが求められています。

今回のヤマダHDとエディオンの経営統合の発表を見ていて、特に気になったのが、住生活領域への広がりです。
ここでいう住生活全体の提案とは、単に家電を生活課題に結びつけて売ることだけではありません。
家電、家具、インテリア、住宅設備、リフォーム、さらには住まいそのものまで、暮らしに関わるものを一つの接点で相談でき、揃えられるようにしていくことです。
家電単品は、型番で検索され、ネット上で価格やポイント、レビューを比較されやすい商品です。
同じ商品であれば、どこが安いか、どこが早く届くか、どこがポイント還元で得かを比べられます。
一方で、暮らし全体の相談や、家電・家具・住設・リフォームを組み合わせた提案は、単純な価格比較だけでは判断しにくい領域です。
こうした提案は、家電を売るというより、暮らしを整える提案に近くなります。
そして、この広がりこそが、店頭を単なるショールームで終わらせず、「この店で相談し、この店で買う理由」をつくる方向につながるのではないでしょうか。
家電量販店が住生活全体へ広がるということは、売場の役割そのものが変わるということでもあります。
これまでは、家電売場、家具売場、リフォーム相談、サービスカウンター、アプリ、会員制度、ポイント、保証が、それぞれ別々に見えていたかもしれません。
しかし、生活者から見れば、それらは本来、暮らしの中でつながっています。
エアコンを買うことは、単に冷房機器を買うことではありません。
猛暑に備えることでもあり、電気代を考えることでもあり、睡眠環境を整えることでもあり、高齢の家族の体調管理にもつながります。
冷蔵庫を買うことは、単に保存家電を買うことではありません。
まとめ買い、作り置き、食品ロス削減、キッチン収納、家族構成、電気代とも関係します。
洗濯機を買うことは、単に洗う機械を買うことではありません。
共働き世帯の家事負担、部屋干し、除湿、収納、家事動線、洗面室の使いやすさとも関係します。
テレビを買うことも、画面サイズだけではなく、リビングの過ごし方、家具の配置、照明、音響、配線、家族の時間とつながります。
このように考えると、家電単品を売る売場から、暮らし全体を相談できる売場へ広がることは、とても自然な流れに見えてきます。
家電を買う店から、暮らしを整える店へ。
商品単品を並べる売場から、住まい全体を相談できる接点へ。
ヤマダHDとエディオンの統合も、こうした業界全体の大きな転換の中で見ると、単なる規模拡大とは違う意味を持っているように感じます。

今回の統合には、業界再編としての大きなダイナミズムもあります。
家電量販業界は、かつてのように店舗数や売場面積、仕入規模だけで成長する時代から、より複合的な競争へ移っているように見えます。
こうした要素が重なり合いながら、家電量販店の役割そのものが変わりつつあります。
生活者から見れば、重要なのは企業同士の統合そのものではありません。
だからこそ、業界再編は企業側だけの話ではなく、売場づくりや販促にも関わる変化として見ていく必要があるのではないでしょうか。

もちろん、住生活全体の提案は、単に高額商品を広げるためのものではないと思います。
物価高の中で、生活者は支出に慎重です。
だからこそ、住生活提案も「より豊かな暮らし」だけではなく、「生活の負担を下げる」「失敗しにくくする」「長く安心して使える」という文脈で伝えることが大切になります。
このように、家電、家具、住設、リフォームを組み合わせることで、住生活提案は生活防衛の提案にもなります。
生活者にとって、住生活提案は「高いものを買う話」ではなく、
暮らしの不安や負担を減らす話
として受け止められる可能性があります。
ここをどう売場で伝えるかが、これからの販促にとって大切になりそうです。
物価高の中で、生活者は価格に敏感です。
ただし、すべての商品を同じ基準で選んでいるわけではありません。
この買い方の違いを、売場側が理解する必要があります。
高価格帯の商品には、なぜ高くても選ぶ意味があるのかを伝える必要があります。
低価格帯の商品には、安くても安心して選べる理由が必要です。
最低限の機能でよい商品には、迷わず買えるわかりやすさが必要です。
これが、これからの売場づくりでは重要になるのではないでしょうか。

ショールーム化が進む中で、店舗には「この店で買う理由」を設計することも求められます。
そのためには、商品説明だけでは足りません。
生活者は、店頭で確認した後に比較します。
それを止めることは難しいと思います。
だからこそ、比較された後でも自店で買いやすい状態をつくることが大切です。
POP、接客、アプリ、会員制度、ポイント、保証、設置、配送、リフォーム相談、自社EC。
これらをバラバラに見せるのではなく、店頭体験から購入まで自然につながるように設計する。
それが、ネット比較時代の売場づくりに必要な視点ではないでしょうか。

この変化は、小売店だけでなく、メーカー販促にも関わってきます。
これまでメーカー販促は、商品の機能やブランド価値を伝えることが中心だったかもしれません。
もちろん、それは今後も重要です。
ただ、店頭で商品を気に入っても、その場で買うとは限らない時代になっています。
生活者は、店頭で確認し、スマートフォンで比較し、納得できるチャネルで購入します。
だからこそ、メーカー販促にも、
この商品を選ぶ理由だけでなく、この店で買う理由
を支援する視点が必要になっていくのではないでしょうか。
たとえば〜
商品単品の魅力だけでなく、店頭で納得し、その店で購入しやすくする販促設計が求められているように感じます。

今回のヤマダHDとエディオンの統合は、家電量販業界の大きな再編として注目されています。
ただ、その背景には、物価高、EC化、価格比較、人口減少、住生活領域への拡張といった、売場づくりにも関わる大きな変化があるように感じます。
しかし、店頭で確認された後に、ネットや別チャネルへ流れる可能性も高い商品です。
だからこそ、これからの家電量販店には、家電単品を売るだけでなく、家具、住設、リフォーム、住まいまで含めた住生活全体の提案を通じて、「この店で相談し、この店で買う理由」をつくることが求められているのではないでしょうか。
売場には、商品を並べるだけでなく、生活者が納得して選べる理由を伝える役割があります。
業界再編の動きは、売場の役割そのものが変わっていく兆しでもあるように感じます。
私たちも、こうした生活者の変化と業界の変化を丁寧に見つめながら、これからの売場づくりや販促の可能性を、皆さまと一緒に考えていければと思います。