2025年8月26日

静かに進行する“虚弱”に、売場はどう向き合う? 〜健康寿命とフレイル予防、その手がかりを探して〜

こんにちは。いつもこのブログに目を留めていただきありがとうございます。

今回の記事では、売場から見えてきた“フレイル”という兆しを取り上げます。
高齢化が進む中で、健康寿命をどう延ばすかというテーマは大きな社会的関心事になっています。
その中で「フレイル」という言葉が、少しずつ店頭にも現れ始めています。
この記事では、売場での事例を交えながら、このテーマが販促とどう接続できるかを一緒に考えてみたいと思います。

フレイルとは何か?

日本の高齢化は年々加速していますが、「年をとっても元気に過ごしたい」という前向きな気持ちも確実に高まっています。

その中で注目され始めているのが「フレイル」という概念です。フレイルとは、加齢により体力、認知機能、社会的つながりが少しずつ弱っていく“健康と要介護の中間”にある状態を指します。本人も周囲も気づきにくい形で進行するのが特徴で、「最近外に出るのが減った」「疲れやすくなった」「体重が減ってきた」「人と会わなくなった」などの変化が初期兆候とされます。

現在のところ、この言葉の認知はまだまだ低く、店頭で商品と結びつけて伝えるには丁寧な啓蒙が不可欠です。
逆に言えば、この分野には新しい価値提案の余地が残されていると感じます。

売場から見えてきた兆し

実際に店頭を歩いてみると、フレイルというテーマはまだ一部の企業が取り組み始めた段階ですが、興味深い兆しが見えてきました。

たとえばイオンでは、フジッコによる「フレイル予防」をテーマとした売場展開が行われています。
豆類の摂取がフレイル予防に効果があることを啓蒙し、カスピ海ヨーグルトの手作りキットも精神的な活力維持に寄与するという研究結果とともに訴求されています。
「さあにぎやか(に)いただく」というキャッチコピーで、食材選びから楽しく健康を意識できる売場づくりが印象的でした。

フジッコやはごろもフーズは、フレイル予防をテーマに、加工食品・精肉など多箇所での展開を働きかける。

また、オーケーストアでは、ディスカウント業態でありながら健康・筋活・腸活といったキーワードでの展開が見られ、銀座店ではフジッコ製品を軸にしたフレイル予防の常設売場が確認できました。
健康というテーマが価格訴求だけでなく、価値訴求として根づき始めている兆しといえるかもしれません。

さらに注目すべきはサンスターによる「オーラルフレイル」の取り組みです。
イオンスタイル野田店では、口腔ケア製品の売場でサイネージを活用し、口の健康が体全体の健康に繋がるという情報を動画で発信。
店頭で足を止めるお客様の姿も見られ、啓発と購買の接点づくりの一つの好例と言えそうです。

このように、「フレイル」や「オーラルフレイル」といったキーワードが、食品・日用品のカテゴリを横断して売場に現れ始めています。
まだ一部ではありますが、高齢社会の中で“虚弱化を防ぐ”という提案は今後さらに広がっていく可能性を感じます。

売場で何ができるか?販促のチャンスを探る

このようなテーマを売場で展開するには、単なる商品情報の訴求ではなく、「生活課題の解決提案」としてどう提示するかが鍵になります。

例えば:

  • 食材売場と健康テーマの接続:豆やヨーグルトなど、食材そのものの価値に加えて「毎日の食生活が未来の健康をつくる」というストーリーを添える。
  • 口腔ケアと体の健康をつなげる導線:歯ブラシや洗口液を「体調管理アイテム」として位置づけ直し、売場に啓発ポスターや簡単なチェック表などを設置する。
  • 地域と連携した売場づくり:たとえば「カムカム教室」のような地域イベントと連動し、売場でその様子を紹介するボードや動画を設置することで、購買行動を“自分ごと化”させる。

これらの取組みは、来店頻度の高い高齢層に向けた共感型の情報提供であると同時に、家族を気遣う若年層にも届く可能性があります。
「誰かの健康を想う」視点が売場にあることで、単なる物販を超えた温かみのある接点が生まれるのではないでしょうか。

まとめ

「フレイル」という言葉は、まだ広く浸透しているとは言えません。
しかし、静かに進行する“見えにくい虚弱”という課題は確実に広がっており、それに対する社会的な関心や意識は高まりつつあります。

売場という生活に近い場で、こうしたテーマに触れることは、消費者の行動変容のきっかけになる可能性があります。
今はまだ小さな芽かもしれませんが、だからこそ丁寧に育てていく価値があると感じます。

健康寿命の延伸と売場の提案をどう結びつけていくか。

私たちも、皆さまと一緒に考え、広げていければと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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